幸村しゅう「私のカレーを食べてください」

わたしは幼い頃からカレーが好きだ。独り立ちしてからは自分でスパイスを混ぜてカレーを作るようにもなったし、こういう事態になる前はよくカレーを食べに出かけていた。なので、この本を一目見たとき、すぐに手を取って立ち読みしてしまっていた。表紙がとてもおいしそうだったので。

新刊であることに気付いたのは読み終わったあとだった。びっくりした。

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 この物語の主人公はカレーに惚れ込み、カレーに人生を捧げ、一度道を外してもまたカレーに引っ張り上げられて、完全にカレーによって成り立っている。こんなに一つのものを愛せるのはうらやましくもあり、逃げ道がないという意味で少し苦しそうにも見える。けれどカレーがつないでくれたつながりが、主人公の成美を様々に支えてくれていて、なんだか良いなあと思ってしまった。だから、やっぱりうらやましいほうが強いかもしれない。

人生いろいろあるけど、落ち込んでるばかりじゃどうしようもない。前向いて、どうにか立ってりゃ活路が開ける。そんな気にさせられる本だった。カレーがつないでくれた縁と経験が彼女を強くしているなって。

あと、トヨエツいい人過ぎない? 怖い人かと思ったけど、すっげえいい人。めちゃくちゃ乱暴だけど、なんだかんだ面倒見良いし。乱暴だけど。

この本を読んでいたら、人が作ったカレーを食べたくなってきたので、今度出前でも頼もうかなあ。